海を越えて持ってきたものたち
2007年11月09日
幼い時から刃物に積極的に育てられた。
鉛筆がうまく削れるようになるまで、小型ナイフしか与えられず
いつも芯が丸くなった鉛筆を使っていた。
先のとがった鉛筆が筆箱に並び、キキとララの手動の鉛筆削りを買ってもらえたのは、
小学5年生の秋だったように思う。
誇らしげに話したところで周りの友達には当たり前のことだったから、
私の小さな達成感は全然理解してもらえなかった。
と同時に、うまく削れないからずっと欲しかったのであって、
苦にならなくなってからだと”新兵器の有難み”もすぐ薄れることもわかったのだった。
今も刃物を研ぐのが好きだ。
日本から持ってきた砥石で週に一度包丁の手入れをする習慣は
私にとって無心になれる大事な時間である。
以前、向田邦子の「大根の月」を読んで
主人公と自分を重ねてヒヤッとしたこともあったが、
ちょっと緊張しながら砥石に向かう姿勢によって
ざわざわした心が平らになってくるのでやっぱりやめられない儀式だ。
そして鰹節削り。
子供のころ、鰹節削りは私の役目のひとつであったのだが、
ある日自分の指も削ってしまった。
それ以来軽い恐怖症になっていたが、10年くらい前に克服した気になって、
誕生日プレゼントに友人にねだった。
鉋をかけたようにシュルシュルと削るのはとても難しい。
スイスまで携えてきたのはいいのだが、
ヨーロッパは乾燥しているのでますます調子が悪い。
歯を出したりしてみてもうまくいかない。
鰹節自体が割れてきてしまい、これではまた指の安全性も心配になってくる。
近々日本に帰国。
適度な湿気の鰹節情報お待ちしています。