初体験
2007年03月08日
確実に春がやってきている。
去年はドカ雪が降ったせいで、春の到来が本当に待ち遠しく
日に日に芽吹いていく風景にワクワクしたものだった。
しかし、今年はなんだかしまりない。
少しずつ生ぬるくなっているようでかなりだらしない春の気配。
やっぱり、冬の寒さに悪態をついてからじゃないと
春を素直に受け入れる気になれない、天の邪鬼の性分。
そこで冬を探しに行くことにした。
行き先はフルムスベルグ。
チューリッヒから車で一時間ほどの雪山である。
ずっとスキーから目をそらしてきたのに、遂に来てしまった。
20年近くゲレンデから離れていた私を連れ出してくれた奇特な友人たち。
ありがたいが、きっと最初で最後だ。
もちろん全て借り物のいでたちで、おそるおそる雪上に立つ。
「板ってすごく短くなって軽くなったんだねー。」
「ウェアってもうワンピースとか誰も着てないじゃん。」
と化石のせりふがつい、口から出る。
私は長野、ソルトレイク、トリノのオリンピック取材していたはず・・・。
目の前を3歳児のスイスちびっ子が満面の笑顔で滑っていく。
明らかに負けた。
少しの坂もスケーティングで上れなくなっている。
なだらかな“ちびっ子斜面”での練習をリタイアしたくなった頃、
ようやくボケた身体が思い出し、ボーゲンで降りられるようになってきた。
板をそろえてみる。
「おっつ、出来たぞ!“なんちゃってパラレル”」
地道なステップアップは望めないので、
いきなりTバー、ゴンドラと乗り継いで高みへ向かう。
2020メートル。空気薄くないか?
夢見ていたのはパウダースノー。なのに何故か斜度のきついアイスバーンが私を襲う。
「ここはスイスなはず・・・。白馬じゃないはず。」
そう思ったとたん、激しく転んでしまう。足首が逆に向いてる!!
友人ははるか彼方豆のようだ。
もうスキーをはずしてしまいたい・・・・とそこに、スイスの老紳士登場。
見かねたに違いない彼は、私を抱き起こし、
「私にゆっくりついてくれば大丈夫。」
頼もしい後姿。カーブのたびにチラ見して気にしてくれる心配りに泣きたくなる。
途中コーチスタッフらしき人が紳士に挨拶。
そういえばやんごとないオーラも感じる。かつての名スキーヤーなのかも?!
必死の形相を気の毒に思ってくれ、中腹で休憩、山観賞タイム。
「ここは絶景スポットだよ。」
山が近いよ、ここはスイスだ“おっかさん”。
やっとのことで麓に着くと、紳士はサングラスをはずすことなく、
振り向くこともなく、すがすがしく去ってしまった。
こんなに情けなかったのに、私はきっと言ってしまう。
「あースイスでスキー?やってるよ。」
鼻を膨らまして・・・。