「トスカーナの休日」といえば・・・美味しいお肉!
念願のアグリツーリズモ体験(1)

2006年08月07日

ぽっかり4日間が空いた。
友人と、まったりとお茶しながら、「なんかさー、胃がキューッとなるような美味しいお肉が久しぶりにたべたいねー。」という話でひとしきり盛り上がったばかり。

スイスは酪農国であり、いたるところに牛が飼われているのというのに、なぜかここチューリッヒでは美味しい肉に出会えるチャンスはめったにない。
高級デパ地下で、神戸ビーフが100グラム100フラン(1万円)で売られているのを見たが、食べた人の話は聞かない。だいたい買う人は誰?いつ神戸からやってきたのだ?

そうだ、この4日間で美味しい肉を食べに行こう。
今まで私が食べた牛肉BEST 1 は、イタリア産まれのキアナ牛。トスカーナ近くで生育されている1歳くらいの白い若牛だ。これの骨付きの部位を炭火で焼くと、“ビステッカ フィオレンティーナ“という名前に生まれ変わる。出世牛とあえて呼ばせてもらいたい。
そうだ、行き先はトスカーナ、念願のアグリツーリズモに泊まろう。

アグリツーリズモは農家が経営する宿泊施設。B&B形式のところもあれば、高級リゾート並みの施設を持つもの、一緒に農作業をしたり、料理を教えてくれたりアットホームな雰囲気なものなど、形式は様々で数も相当あるようだ。

イタリア語も自信がないので、日本語のサイトでリサーチすると、かなり希望にそったアグリを発見。
「アグリツーリズモ ポーデレ ベッチ」
明るく快適そうな部屋、プールもあるようだ。料理教室に、ワインティスティング、駅からの送迎付。そして何と言っても、写真に並ぶスタッフの笑顔に惹かれた。
もちろんお目当てのキアナも用意してくれるようだ。
こういうのは直感にまかせたい。さっそく予約。
「そうです、急ですがあさってから3泊4日でお願いします。」

トスカーナを目指した朝は早かった。
チューリッヒを朝7時の電車に乗るとミラノ経由で14時前にはフィレンツェに着く予定。しかし、イタリア国境を越えたとたん遅れが目立ち、30分も遅れてミラノに到着。乗り継げず、呆然となる。
「おかしいと思ったんだよー。イタリア鉄道で探したこの乗り継ぎは、スイス鉄道のサイトには出てなかったんだもん。」
やはりイタリア。ここはイタリア。時計の国スイスに慣れてしまった私達が悪いのだ。

フィレンツェからローカル線に乗り換えて45分。ボルゴサンソレンツォという小さな駅で降りる。駅には日本人コーディネーターの奥村さんとアグリのスタッフのステファノがお出迎え。
「こちらのアグリでは朝食もたっぷり出ますが、小腹がすいたときのために何か買っておきますか?」と、行く道で奥村さんがアドバイス。朝市や小さな商店しかないものかと思っていたら、立ち寄った先は意外に近代的な大型スーパーマーケット。3泊4日というのにメロン・桃・アプリコット・さくらんぼとどっさり買って3.5ユーロ。チューリッヒなら20フラン(2000円)はするはず・・・と主婦モードに切り替わる。余ったらお土産にするんだもんねーと言い聞かせる私達。
ビニール手袋が置いてあることに気づく。果物を買う際は“むやみに触るな”という意味らしい。理由がわかった頃は“柔らか桃探し”で触りまくった後。早く退散しなくては・・・。

ほどなく「アグリツーリズモ ポーデレ ベッチ」に到着。
奥さんのイラリアさんが出迎えてくれる。表情豊かで、気さくな男顔マンマだ。英語も通じるよう。
私達に用意されていたのは母屋のホテル形式のダブルルーム。ソファもあるし、かなりゆったりしたスペース。ご主人のロベルトさんは建築業の傍ら、古美術も手がけているだけあって、趣味のいいアンテーィーク家具がそろっている。窓からは、ベッチさん所有のぶどう畑やトスカーナらしいなだらかで緑豊かな稜線が見渡せる。

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「来たよ。トスカーナ」「待ってて キアナ!」
夕食までは、アグリ探検。母屋の裏には白いパラソルに囲まれたプール。
うー気持ちよさそう。しかし水着はもってきたものの、摂氏16℃ぐらいだとまだまだ凍える。先週のドイツ人ゲストは泳いでいたとステファノが呆れていた。きっと日本人より体温が2℃くらいは高いはずだ。
プールに面した離れには2,3家族泊まれるキッチン付アパートメントタイプが2部屋。庭は手入れが行き届き、ラベンダーなどのハーブなどが植えられて、散歩しているだけでいい香りがしてくる。
癒され度がかなり高くなっている私たちに、夕食のお知らせ。
見よ!うっすらと肉のうまみが浮き出ているキアナちゃん2枚。1枚800グラム。
自分の顔ほどの大きさだ。

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「ねえ、私たちこんな大きな肉食べられる?ほんと?」
「焼けば縮むよ。」
肉は縮まなかった。
ご主人のロベルトさんがじっくり炭火で焼いてくれた、ビステッカフィオレンティーナ。
名前は美しく、お味はジューシーでダイナミック。塩こしょうにオリーブオイルだけだなんて信じられない。

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美味しい肉を仕入れるのもお肉屋さんに顔が利かないと難しいそうだ。さすがコネの国イタリア。
肉食な気持ちで口いっぱいにほおばり、ワインで飲み下す。至極の夜は更けていった。
続きはまた次回。